金価格を同時に押し下げる3つの力 — それでも長期見通しが変わらない理由

金価格を同時に押し下げる3つの力 — それでも長期見通しが変わらない理由

金価格を同時に押し下げる3つの力 — それでも長期見通しが変わらない理由

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金が史上最高値付近から15%以上下落した。「イラン戦争が原因」と単純化する分析が多いが、実際には3つのまったく異なるメカニズムが同時に作動している。この3つを分離して理解してこそ、金の次の方向を正確に読むことができる。

TL;DR オイルショック売り、ドルペッグ防衛売り、戦争資金調達売り — 3種類の強制売却が同時に金を押し下げている。ロシアの4月金輸出禁止と中国の購入一時停止も加わった。短期的な下押し圧力は強いが、長期の構造的要因(米国債務、脱ドル化、利下げの不可避性)は変わっていない。

第一の力:オイルショック売却国

エネルギーを輸入に頼る国々が、原油価格急騰によるドル需要の急増で金を売却している。

トルコが代表例だ。石油90%、ガス98%を輸入するトルコは2週間で58トンを処分した。インドは2026年1月以降、数年ぶりに純売却国に転じた。EU諸国もドル準備を急速に消耗している。

このグループの売りは原油高が続く限り継続する。売り終了の条件は明確だ — 原油価格の下落、エネルギー供給ルートの回復、外交的解決のいずれか。

第二の力:ドルペッグ防衛国

湾岸諸国が自国通貨のドルペッグを維持するために金をドルに転換している。

サウジアラビア、UAE、カタール、バーレーン、オマーン — これらの国は石油輸出収入によるドル流入が減少する一方で、軍事費増加と資本流出によりドル需要が増加している。ロンドンの金庫データは今年45トンの純流出を示すが、公式報告はほぼない。

このグループの売却規模は潜在的に最大だ。公式・非公式の金保有量を合わせると数百トンに達する可能性がある。

第三の力:戦争資金調達売り

戦争中の国や戦争に資金を提供している国が、軍事費のために金を現金化している。

ロシアは昨年300億ドル相当の金を売却し、この傾向は続いている。ポーランドは約550トン(130億ドル相当)の金を国防費に充てる案を議論中だ。湾岸諸国もこのカテゴリーに該当しうる。

ロシアの金輸出禁止 — 4月が変曲点

ここにロシア変数が加わる。世界最大の金生産国の一つであるロシアが、2026年4月から100g超の金の輸出を事実上禁止する。約1万5千ドル相当 — 個人レベルであり機関レベルではない。

背景は2022年のLBMA除名とG7のロシア産金輸入禁止だ。ロシアは独自の決済システムと並行金市場を構築している。

4月の期限前に、ロシア国内の金保有者は海外に金を持ち出そうとするだろう。資産が法的にロシアに縛られることを望む人はいない。これは短期的に市場に追加の売り物量が出ることを意味する。

しかし4月以降、ロシア産の金は国際市場から消える。中国が銀の輸出を制限した時に銀価格に何が起きたかを考えれば、供給縮小の長期的効果は価格上昇方向だ。

最大の買い手が消えた

状況をさらに悪化させるのが最大買い手の不在だ。

中国は2025年に27トンを購入した(実際にはもっと多い可能性がある)が、2025年第4四半期に購入を一時停止した。世界最大の国家買い手が一時停止したのだ。中央銀行が年間1,000トン以上を買い入れて金価格を支えていた構図が揺らいでいる。

売り圧力が3方向から来る一方で、買い側は最大プレーヤーが抜けた。短期的に金にとって厳しい組み合わせだ。

それでも長期見通しが変わらない理由

ここで一歩引いて考える必要がある。

米国政府の利下げは結局避けられないか?38兆ドルの債務と年間1兆ドル超の利払いを見れば、そう考える。米国政府はもっと紙幣を刷るか?赤字の規模を見れば、そうせざるを得ない。人為的に金利を抑えようとするか?利払いが国防予算を超えた状況で、選択肢はほとんどない。

これらすべてがドルの価値下落を意味する。ロシアが金輸出を制限し独自の金融システムを構築していることも、長期的にドル需要を減らす。脱ドル化の動きは戦争で一時中断されたが、構造的な方向は変わっていない。

今起きていることは、長期強気相場の中の強制売却局面だ。価格が上がっている時にしか買わない投資家にとっては不快な時期だ。しかし構造を理解する投資家にとっては、同じ時期がまったく異なって見えるかもしれない。

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Ecconomi

米国大学 Finance & Economics 専攻。証券会社レポートアナリスト。

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