バリュエーションの罠:優れた企業が常に良い投資とは限らない - Costco vs Palantir
優れた企業と良い投資は別物です。CostcoとPalantir、2社の事例を通じてバリュエーションの重要性を探ります。
Costco:完璧なビジネス、過度な価格
Costcoは疑いなく優れた企業です。会員制倉庫型店舗モデルは、顧客ロイヤルティと安定的な収益を同時に提供するユニークなビジネスです。
Costcoのビジネス強み
90%以上の会員更新率:更新率は米国で92%、全世界で90%を超えます。これは顧客がCostcoを単なる小売店ではなく必須サービスと認識していることを意味します。
安定的な収益構造:利益の大部分は会員費から来ます。商品はほぼ原価で販売して顧客満足を最大化し、会員費で収益を創出するユニークなモデルです。これは景気変動にも安定的な収益を保証します。
強力なブランド:Kirkland Signatureプライベートブランドは品質と価格の両面で高評価を受け、高マージン商品を通じて収益性を改善しています。
問題はバリュエーション
しかし、これらすべての利点にもかかわらず、Costco株は現在売却推奨を受けています。理由はただ一つ、高すぎるからです。
P/E 55倍:現在のP/E比率は55倍に達します。小売企業としては異例の高水準です。WalmartがP/E 30倍、Targetが15倍であることと比較すると、どれほど高いプレミアムがついているかわかります。
成長率に対して過大評価:売上成長率は年7-9%水準です。優れた成長率ですが、P/E 55倍を正当化するには不足しています。一般的にPEG比率が1以下なら適正価格と評価されますが、CostcoのPEGは6以上です。
マージン改善の限界:Costcoは意図的に低マージンを維持するビジネスモデルです。急にマージンを大きく高めることができないため、利益成長も売上成長と同様の速度に制限されます。
投資戦略:良い会社、悪いタイミング
Costcoは永久保有したい企業ですが、現在の価格で新規購入するには高すぎます。株価が20-30%調整されれば良いエントリー機会になりますが、現水準では売却または観望が適切です。
Palantir:AIテーマの極端なバリュエーション
Palantirはデータ分析およびAIプラットフォーム企業で、AIブームとともに株価が急騰しました。しかし、株価上昇の大部分は実績改善よりもバリュエーション拡大に起因します。
Palantirのビジネス
政府契約依存:売上の約55%は米国政府および同盟国政府契約から来ます。国防、情報機関などで使用されるデータ分析プラットフォームを提供します。
民間部門拡大:最近、民間企業顧客が増加しており、AI機能を強化したAIPプラットフォームが注目されています。しかし、依然として政府売上に大きく依存しています。
売上成長:2024年売上成長率は約25%水準で良好です。しかし、絶対的な売上規模は年間25億ドル水準で、時価総額に比べて小さいです。
極端なバリュエーション
P/S 40倍以上:Price-to-Sales比率は40倍を超えます。これはSaaS企業の中でも最上位です。SnowflakeがP/S 10倍、Datadogが15倍であることと比較すると極端に高いです。
不安定な収益性:GAAPベースでかろうじて黒字であり、株式報酬費用を除いた調整営業利益率は高いですが、実際の純利益は微々たるものです。
政府依存度リスク:政府予算削減や契約更新失敗時、売上に大きな打撃を受ける可能性があります。民間部門拡大が必要ですが、ここではSnowflake、Databricksなどと競争する必要があります。
AIテーマのバブル
Palantir株価上昇の主な原因はAIテーマです。しかし、実際のAI関連売上増加がバリュエーション上昇を正当化するかは疑問です。
成長率鈍化の可能性:政府契約は大型ですが成長速度が遅いです。民間部門で速い成長を見せますが、全体売上に対する比重がまだ小さく、会社全体の成長率を大きく引き上げるのは困難です。
競争激化:AIデータプラットフォーム市場は競争が激しいです。Palantir独自の競争優位性が何なのか明確ではありません。
投資戦略:極端なバリュエーション、売却
P/S 40倍はどんな成長率でも正当化しにくいです。今後数年間で売上が2倍になってもバリュエーションは依然として高いでしょう。株価調整の可能性が大きく、現水準では売却が適切です。
結論:バリュエーションは収益率を決定する
CostcoとPalantirは全く異なる業界、異なるビジネスモデルの企業ですが、共通点があります。どちらも優れた企業ですが、現在の価格が高すぎるということです。
良い企業 ≠ 良い投資:どんなに優れた企業でも過度な価格を支払えば悪い投資になります。逆に平凡な企業でも安い価格で買えば良い収益を出せます。
忍耐の重要性:良い企業を発見したら、適切な価格が来るまで待つ忍耐が必要です。今すぐ買えなくても、いつか機会は来ます。
投資において何を買うかと同じくらい重要なのが、いくらで買うかです。