世界不確実性指数が30年ぶり最高値 — リテールが毎回繰り返す3つの致命的ミス
世界不確実性指数が30年ぶり最高値 — リテールが毎回繰り返す3つの致命的ミス
TL;DR 世界不確実性指数がコロナ・2008・9/11をすべて突き抜けて30年ぶり最高値を記録した。しかしS&P 500は史上最高値圏にある。この乖離は歴史的に長続きしない。リテールが繰り返す3大ミスは現金パニック、フリーズ、スパイク追撃だ。最も高くつくのは「安全に」現金へ逃げることだ。
今が私が市場を見てきた中で最も奇妙な局面だ。一方では各種指標が同時に警報を鳴らしており、もう一方ではS&P 500が史上最高値圏を維持している。この乖離は過去にも数回見た。毎回長続きしなかった。
データが語る現状 — コロナ・2008・9/11をすべて突破した不確実性
世界不確実性指数(World Uncertainty Index)は、世界の経済レポートで「不確実性」という単語が登場する頻度を追跡する指標だ。この指標が過去30年で最高値を記録した。コロナ時より高い。2008年金融危機時より高い。9/11直後より高い。しかも僅差ではない。
今回の局面が過去の危機と決定的に異なるのは、原因が一つではないことだ。すべてが同時に起きている。
- 関税対立が貿易政策を混沌化させ、企業は週単位でルール変更に対応せざるを得ない
- イラン紛争の影響でブレント原油が1バレル約126ドルまで急騰
- 金が史上初めて1オンス5,000ドルを突破
- ドルが主要メディアでも警戒されるレベルまで軟化
- OECDが米国インフレ率を4.2%と予測。想定以上に粘着的
- FRBはコーナーに追い込まれた — インフレで大胆利下げできず、景気減速で利上げもできない
- グローバル成長率がコロナ前を下回っており、誤差を吸収する余力が乏しい
それでもS&P 500はトランプ氏のツイート一つで揺れながら史上最高値圏にある。この乖離は歴史的に長続きしない。いずれ調整が入ると見ている。
リテールが繰り返す3つのミス
不確実性が急上昇するたびに、個人投資家が犯す致命的ミスが3つある。毎回だ。今回もすでに至る所で見られている。
ミス1:現金パニック
すべてを売って現金に逃げること。脳が「守らなければ」と叫ぶから安全に感じられる。問題はインフレ率が4%台の現在、現金保有だけで年4%の損失が確定することだ。
さらに大きな問題はタイミングだ。歴史的に主要な地政学イベントから12ヶ月後の市場は70%の確率で上昇していた。パニック売りした人は損失を確定させた後、その後の反発を逃す。「安全に」やろうとして最も高くつく防御になる。
ミス2:フリーズ
二つ目のミスは何もしないことだ。目を閉じて過ぎ去るのを願う状態だ。これは戦略的にホールドするのとは全く異なる。前者は評価を経て選択したホールド、後者は評価そのものを回避する麻痺状態だ。
フリーズの問題はリスクを管理するのではなく目をそらしている点だ。あなたのポートフォリオは以前の環境に合わせて作られている。環境が変わったのに再評価しないのは、目を閉じて運転するのと同じだ。
ミス3:スパイク追撃
最も危険なミスだ。金が急騰したから今買う。原油が上がったからエネルギー株に全投入する。歴史的に危機初期のスパイクはほぼ常に最悪の買いタイミングだ。
理由は単純だ。初期スパイクは恐怖とアルゴリズム追撃で作られる。ファンダメンタルではない。埃が落ち着けば相当部分を戻す。そしてそのスパイクを作ったのは機関投資家だ。彼らはすでにポジションを持っており、あなたが高値で買えば彼らに売る形になる。
今注目すべきこと — 乖離は両側から縮まる
この乖離は二つの方向のいずれかで縮まる。S&Pが下がるか、不確実性指標が下がるかだ。私の判断ではその両方が部分的に起きる。市場はある程度調整され、一部の不確実性は解消される。
個人的に最も過小評価されているリスクはインフレの粘着性だ。4.2%の予測はFRBの運身幅を完全に狭める。グロース株とテック株のバリュエーション前提は「利下げが近い」という仮定に支えられているが、その仮定が揺らげば一段階バリュエーションリセットが起きる可能性がある。
逆に最も過大評価されているシナリオは「すべてが間もなく正常に戻る」という想定だ。関税体制、ドル安、中央銀行の金買いは構造的変化だ。大統領選挙一回では元に戻らない。
現金に逃げることも、フリーズすることも、スパイク追撃もしない第三の道がある。それが次の記事のテーマだ — 機関投資家がこういう局面で実際にどう動くのかを。
FAQ
Q: 一部だけ現金に移すのもミスですか?
A: 「一部現金」と「すべて現金」は全く別物だ。ポートフォリオに5~15%のドライパウダーを置くのは機会買いのための合理的戦略だ。リスク評価後に下した決定なら賢明だ。パニック反応でなければ問題ない。
Q: 今金やエネルギー株を買うのはスパイク追撃ですか?
A: 場合による。すでに大きく上昇した大型株を追いかけるのは典型的なスパイク追撃だ。しかしエネルギーインフラ(パイプライン、貯蔵、精製)のような2次・3次受益株はまだ相対的に動いていない場合が多い。「何を買うか」より「なぜ買うか」と「いくらで買うか」が核心だ。
Q: 不確実性指数の最高値は必ず下落を意味しますか?
A: 違う。不確実性指数は方向予測指標ではなく変動性予告指標に近い。過去パターンを見れば極端な不確実性の後12ヶ月市場が上昇していたケースが70%だ。重要なのは方向ではなくどのセクターが勝ちどのセクターが負けるかの再編スピードだ。
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