エネルギー株と原油価格の巨大な乖離 — ウォール街が見落としているもの
エネルギー株と原油価格の巨大な乖離 — ウォール街が見落としているもの
ウォール街で10年以上アナリストとして働いて学んだことがある。マネーの流れを追えということだ。ニュースや感情ではなく、実際にお金がどこに向かっているかを見ると、市場が見落としているものが見えてくる。
今、エネルギー市場でまさにそのような乖離が起きている。
数字が語る乖離の大きさ
XLE — State Street Energy Select Sector SPDR ETF。米国エネルギーセクター最大の22銘柄を組み入れた代表的なETFだ。イラン紛争開始以降、原油は40〜50%急騰した。1バレル65ドルから100ドルを超え、最高115ドル近くまで上昇した。ガソリン価格は35%上がった。
しかしXLEは?直近1カ月でわずか8%の上昇だ。
紛争開始時点からでも約10%。原油を掘削し、精製し、消費者に販売する企業が、原油40〜50%上昇のなかでこれだけしか上がっていないのは直感的に違和感がある。
USO(United States Oil Fund、原油価格に連動)とXLEを5年間重ね合わせると、両者はほぼ同じ動きをしてきた。原油価格とエネルギー株は当然連動すべきだからだ。しかし今年に入り、この相関が完全に崩れた。年初来で原油は60〜70%上昇、エネルギー株は約33%上昇に留まる。直近1カ月だけで見ると、乖離はさらに大きい。
ウォール街がこのギャップを生んだ理由
なぜこの乖離が生まれたのか。
核心は、市場の紛争期間に対する判断にある。ウォール街はこの戦争が長く続くとは予想していなかった。選挙の年であり、物価負担は政治的に耐え難い問題だ。政府が想定した4〜6週間の作戦期間すら、市場は長すぎると見ていた。早期に終結し、原油は戦前水準に戻ると賭けたのだ。
だからエネルギー株は「一時的な急騰」として織り込まれた。
しかし問題がある。CME先物市場は少なくとも8月まで原油が1バレル80ドル以上を維持すると示している。サプライチェーンアナリストはホルムズ海峡の正常化に200日以上かかると推計している。「一時的」という前提が崩れれば、この価格ギャップは決算シーズンに爆発的に解消される可能性がある。
エネルギー企業は実際いくら稼いでいるのか
NRDCのデータによると、消費者がガソリン3ドル分を購入するとき、エネルギー企業の利益は1ドルを超える。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 生産コスト | 39% |
| 輸送コスト | 1% |
| 精製コスト | 10% |
| 税金 | 11% |
| 利益 | 35% |
ガソリン価格が1ドル上がるごとに、エネルギー企業は35セントの追加利益を手にする。直近1カ月でガソリンが1ガロン当たり1ドル以上上昇していることを考えると、この恩恵は相当なものだ。
にもかかわらず、XLE構成銘柄の株価はこの現実をまだ織り込んでいない。
個別銘柄の乖離分析
個別銘柄に下りていくと、乖離がより鮮明になる。
バレロ(VLO) — 精製企業の中で最大の恩恵を受け、直近1カ月で20%上昇。世界的な精製ボトルネックが深刻な状況で、精製能力を持つ企業はプレミアムを享受している。それでも原油の上昇幅に比べれば控えめだ。
オキシデンタル・ペトロリアム(OXY) — ウォーレン・バフェットが長年好んできた銘柄。17%上昇。E&P企業として、原油高が直接的な売上増に繋がる。
コノコフィリップス(COP) — 14%上昇。米国最大の独立系E&P企業。
APA コーポレーション(APA) — パイプライン資産に強みを持つ銘柄で、相対的に良好なパフォーマンス。
いずれもまずまずのリターンだが、原油40〜50%上昇、ガソリン35%上昇の局面で期待されるレベルには遠く及ばない。
この乖離がなぜ機会なのか
エネルギー企業の実質的なキャッシュ創出はすでに大幅に増加している。1バレル100ドルでのキャッシュフローと65ドル時代のそれは次元が異なる。しかし株価には反映されていない。
理由は単純だ。市場がこの状況を一時的だと織り込んだからだ。
だが先物市場はそう見ていない。実際のサプライチェーン復旧スケジュールもそうは示していない。イラン交渉の結果もまだ分からない。
これはつまり、エネルギー企業がこれからの四半期決算を発表するとき、市場予想を大幅に上回る数字が出る可能性が高いということだ。セクター全体で決算サプライズの連鎖が起きるかもしれない。
リスクと反論
もちろんこの論理に反論もある。
停戦が本格的な和平に繋がった場合。 原油が65ドル近辺に急速に戻れば、エネルギー株の追加上昇余地は限定的だ。ただし、先物市場はこのシナリオを低い確率で織り込んでいる。
グローバル景気後退リスク。 原油100ドルが長期化すれば消費萎縮と景気減速につながり、最終的に原油需要そのものを減少させる可能性がある。自己破壊的サイクルだ。
エネルギー転換の加速。 高い原油価格は再生可能エネルギーやEVの普及を加速させる。長期的には化石燃料需要の構造的低下を前倒しする可能性がある。
これらのリスクを考慮しても、今後3〜6カ月を見れば、エネルギー企業の利益がコンセンサス予想を大幅に上回る可能性は高い。原油価格とエネルギー株の間のギャップは、意図的に無視するには大きすぎる。
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