FRBの利上げ再開リスクが浮上:中東情勢・原油高・スタグフレーションの三重苦
FRBの利上げ再開リスクが浮上:中東情勢・原油高・スタグフレーションの三重苦
米10年国債利回りが数カ月ぶりの高水準を更新しています。市場が最も恐れるシナリオ、すなわち「利下げ」ではなく**「利上げ」**の可能性が、静かに現実味を帯び始めました。
利上げ確率30%という数字の本当の意味
CME Fed Watchツールによると、2026年末までにFRBが利上げを実施する確率は約30%にまで上昇しました。現在のFF金利は3.5〜3.75%(350〜375bp)。つい数カ月前まで、市場は年内2〜3回の利下げをほぼ確実視していました。
30%という数字だけを見れば、メインシナリオとは言えません。しかし、私が注目しているのはトレンドの変化です。利下げ一色だった市場の織り込みが、利上げ方向に動き始めたこと自体が重要なシグナルです。債券市場は株式市場に先行する傾向があり、今の債券市場が発しているメッセージは明確です。
中東紛争が原油価格を押し上げている
原油価格がバレルあたり80ドルを突破しました。ロシア・ウクライナ紛争のピーク以降、原油は着実に下落トレンドを描いていましたが、中東情勢の緊迫化によって反転上昇に転じたのです。
これは単なる原油高ではありません。エネルギー価格はインフレの根幹を成す要素です。原油が80ドル以上で定着すれば、輸送コスト、製造原価、そして消費者物価全般に波及効果が及びます。私の分析では、このリスクは現在の市場で最も過小評価されている要因です。
ドルも上昇基調に転じています。利下げ期待の後退に伴い、ドル売りポジションの巻き戻しが進んでいるのです。ドル高は輸出企業の業績を圧迫し、グローバルな流動性を縮小させる要因となります。日本市場にとっては、円安による輸入コスト増というさらなる負担も加わります。
スタグフレーション:最も過小評価されたリスク
私が最も懸念しているシナリオはスタグフレーションです。
雇用市場には減速の兆候が見られます。新規雇用創出のペースが鈍化し、企業の採用計画も慎重になっています。しかし同時に、インフレは再び加速の気配を見せています。景気は冷え込んでいるのに物価は上がるという、中央銀行にとって最も対応が難しい組み合わせです。
ここで歴史的な比較が重要になります。1980年代、ボルカー議長がインフレを退治した当時、米国のGDP比債務比率は30〜35%でした。だからこそ金利を20%近くまで引き上げてインフレを抑制できたのです。しかし現在はどうでしょうか。GDP比債務比率は120%を超えています。同じ手法でインフレと戦うことは、数学的に不可能な構造です。
金利を大幅に引き上げれば、利払い費用だけで連邦財政が機能不全に陥りかねません。これは理論ではなく、単純な算術の問題です。
主要指数の現状:まだ底ではない可能性
NASDAQは年初来で約6%下落しています。ダウ平均も約6%、S&P 500は約5%の下落です。
この程度の下落を見て「押し目買いのチャンスでは」と思われるかもしれません。しかし私の見方では、現時点ではまだ積極的な買い場とは言えません。地政学的緊張、上昇する金利、利下げに消極的なFRBという三つの逆風が同時に吹いているからです。
短期的な反発を期待するよりも、長期的な優良銘柄を少しずつ分散して買い増す戦略がより現実的です。私自身は、Netflix、ServiceNow、Microsoftなどの銘柄でキャッシュ・セキュアード・プット(現金担保プットオプション売り)戦略を活用しています。株価が下がれば納得できる価格で取得でき、下がらなければプレミアム収入を得られる手法です。
今、注視すべきポイント
現在の市場における最大のリスクは、「金利は下がる」というコンセンサスが間違っている可能性です。
原油上昇、ドル高、雇用鈍化が同時に進行する環境において、FRBは極めて狭い道を歩まなければなりません。インフレを抑えようとすれば景気が犠牲になり、景気を支えようとすれば物価が暴走するリスクがあります。このジレンマが解消されるまで、市場のボラティリティは拡大する可能性が高いと見ています。
無理なレバレッジを控え、現金比率を確保し、長期的な視点で優良資産をじっくりと積み上げていく。今のこの局面で、私が最も合理的だと考えるアプローチです。
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