金の「ディップ買い」戦略が終わった理由 — マクロが変われば戦略も変わるべき

金の「ディップ買い」戦略が終わった理由 — マクロが変われば戦略も変わるべき

金の「ディップ買い」戦略が終わった理由 — マクロが変われば戦略も変わるべき

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金市場でこの2〜3年間、最も簡単だった戦略が一つあった。下落時に買って待つことだ。

2023年から2025年にかけて、この戦略はほぼ無敵だった。中央銀行が金を買い続け、利下げ期待が広がり、インフレが下落傾向を示す中、金は一方向にしか上がらなかった。ディップを買う人は儲かった。シンプルで、再現可能で、甘美だった。

その時代は終わったと私は見ている。

欠けたパズルのピース:利下げ

金の強気相場は二本の柱の上に立っていた。

第一に、中央銀行の買い。各国の中央銀行がドル依存度を下げるために金を着実に買い続けていた。これはまだ有効だ。今も続いている。

第二に、利下げ期待。FRBが利下げするという期待が金の機会費用を下げ、ドルを弱め、金に追い風を送り続けた。

この第二の柱が崩れつつある。

最近の雇用データを見てほしい。強かった。単に強いのではなく、市場予想を大幅に上回った。失業率は低水準を維持し、経済成長指標も堅調だ。FRBの立場からすれば、このデータを見て出る結論は一つだ。「なぜ急いで利下げする必要があるのか?」

インフレも同様だ。

生産者物価指数(PPI)が予想を上回って着地した。2年物国債利回りが上昇を続けている。市場が利下げをどんどん織り込まなくなっているということだ。金曜日にCPIデータが発表されるが、粘着的なインフレを再確認させる可能性が高い。

柱が一本残っているからといって建物が安全とは限らない。半分だけの強気論では、金が以前のように簡単に上昇するのは難しい。

チャートが語ること

金のチャートを2024年、2025年と比較すると、雰囲気が全く違う。

以前は買って保有するだけでよかった。押し目が来ても素早く回復し、トレンドが強すぎてタイミングを間違えても時間が解決してくれた。「イージーマネー」という表現は誇張ではなかった。

今は違う。金のブルたちがこのチャートを上に押し上げるには仕事をしなければならない。簡単なモメンタムは消えた。停戦ニュースで金は一時反発したが、フォロースルーの動力が見えない。

正直に言うと、今の金に対する私のポジションはニュートラルだ。

もし無理にトレードするなら?ストラングルの売りを検討するだろう。大きな方向性の動きが出にくい環境だと見ているからだ。上に大きく行く動力も、下に崩壊する触媒も不足している。

マクロが変わったら戦略も変えるべき

ここで最も重要な教訓がある。

過去数年で金トレーディングから大きな利益を得た人たちがいる。私もその一人だった。下落時に買って上昇に乗る戦略、本当に甘美だった。しかしそれが機能したのは戦略が天才的だったからではなく、マクロ環境がその戦略に完璧にフィットしていたからだ。

マクロが変わった。

利下げストーリーが崩壊した。インフレが粘着的だ。雇用が強い。ドルが堅調だ。この4つ全てが金への逆風だ。

テクニカル分析だけで金をトレードしていたなら、最近なぜ以前と同じリターンが出ないのか疑問に思ったはずだ。答えはシンプルだ。マクロが変わったのだ。

中央銀行の買いは続いている。それは認める。しかしそれだけでは十分ではない。2023〜2025年の金の強気相場は、中央銀行の買い+利下げ期待の合作だった。片方が欠けた状態で同じ結果を期待するのは非現実的だ。

金に再びチャンスが来るには

金が再び力強く上昇するには何が必要か。

利下げが再びテーブルに上がる必要がある。そして利下げが急務になるには?雇用市場に亀裂が入る必要がある。最近の雇用データが強かったということは、そのシナリオが当面は遠い話だということだ。

インフレの急速な下落も金にはプラスだ。しかしPPIが予想を上回り、原油が依然として高水準にある状況では、インフレの急落を期待するのは難しい。

だから私の結論はこうだ。金は当面レンジ相場だ。劇的な反発も劇的な下落もありそうにない。マクロデータが方向を変えてくれるまで、金トレーダーは忍耐の時間を過ごすことになるだろう。

2023〜2025年の黄金時代を懐かしむ気持ちは理解できる。私もそうだ。しかし過去の戦略に固執するのは、市場で最もコストの高い間違いの一つだ。マクロは重要だ。環境が変わったら、戦略も適応しなければならない。

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米国大学 Finance & Economics 専攻。証券会社レポートアナリスト。

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