方向は当てたのにお金は失った:レバレッジETFが静かに元本を削る仕組み
方向は当てたのにお金は失った:レバレッジETFが静かに元本を削る仕組み
方向を当てているのに、なぜお金を失うのでしょうか
レバレッジETFは「保有期間の収益率」ではなく「一日の収益率」を2倍・3倍で複製するよう設計されており、毎日引け後に基準をリセットします。そのため市場が上下に激しく揺れると、数週間後に原資産が元の水準に戻っていても残高は減っています。この現象をボラティリティ・ディケイ(volatility decay)と呼びます。
直近、半導体株が高値から30〜50%下落する局面で最も大きな傷を負ったのは、単に半導体株を買った人たちではありませんでした。レバレッジ商品を通じて同じ方向に2倍、3倍で賭けた人たちです。
私はこれを「危険な商品」というより、説明なしに売られるから危険な商品だと捉えています。構造そのものは正直です。ただ、ほとんどの個人投資家がその構造を知らないまま買っています。
「毎日リセットされる」の実際の意味
通常のETFは複数の株式を入れたバスケットにすぎません。レバレッジETFは違います。原資産の一日の動きを2倍または3倍で追随するよう設計されています。
上がるときは素晴らしく見えます。原資産が1%上がれば2〜3%儲かります。ところが多くの人が忘れているのは、これが両方向に等しく働くという事実です。1%下がれば2〜3%失います。
本当の罠はここから始まります。毎日リセットされるため、損益の積み上がり方が私たちの直感と食い違うのです。数字で見てみましょう。
| シナリオ | 原資産 | 3倍レバレッジ |
|---|---|---|
| 1日目 -10% | 100 → 90 | 100 → 70 |
| 2日目 +11.1%(原資産は元本回復) | 90 → 100 | 70 → 93.3 |
| 最終結果 | 0% | -6.7% |
原資産はぴったり元の位置に戻ったのに、レバレッジ商品は6.7%を失いました。これがたった2日間です。今のように一日で8〜13%動く市場で、この過程が1カ月繰り返されれば損失は加速度的に積み上がります。
言い換えれば、数週間後に方向を当てていても大きく損をすることが構造的に起こり得るということです。運が悪いからではなく、商品設計がそうなっているからです。
韓国で実際に起きたこと
最も恐ろしい実例は韓国から出ました。こうした商品が非常に人気を集めた市場です。
関連市場の規模は約530億ドルから数週間でおよそ半分の水準にまで縮小しました。そしてメモリ半導体大手に連動するある商品は、1カ月で約80%の損失を出したと伝えられています。事態が深刻になりすぎ、金融当局が介入してブレーキをかけざるを得ませんでした。
数字を整理し直すとこうなります。原資産となる半導体株が30%下落したとき、レバレッジ版は元本がほぼ消えました。30%と80%の差、その隙間を埋めたのが毎日のリセットとボラティリティ・ディケイです。
ここははっきり言わせてください。これは投資ではありません。ダイナマイトを持って行うギャンブルに近いものです。
なぜ個人投資家が最も大きな打撃を受けるのか
構造的な理由があります。
第一に、レバレッジ商品はすでに大きく上昇した資産に対して最も活発に取引されます。つまり資金の大半が高値圏で流入します。
第二に、上昇局面ではディケイがほとんど体感されません。トレンドが一方向に流れているとレバレッジはむしろ有利に働くため、利用者は「この商品はうまく機能する」という誤った学習をしてしまいます。
第三に、下落は常に上昇より速い。そしてレバレッジはその速度まで倍加させます。
結局、個人投資家はディケイが最も弱いときに学び、最も強いときに代償を払います。この商品が繰り返し同じ結果を生む理由がここにあります。
それでも使うなら、守るべき線
私はレバレッジ商品を長期保有資産として使うことに明確に反対です。ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーが長年警告してきた理由も同じです。ただ現実に禁止された道具ではないので、最低限この線は守るべきだと考えます。
- 保有期間は数日単位に限定する。 この商品はそもそも一日単位で設計されています。数カ月保有する理由は設計上存在しません。
- ボラティリティが極大化した局面では手を出さない。 ディケイはボラティリティの二乗に近い形で拡大します。市場が最も面白そうに見えるときが最も危険です。
- 損失上限を金額で決めておく。 比率ではなく、失っても構う絶対額で決めるべきです。80%の損失を前提にしても耐えられる金額か、自分に問うてください。
- 確信をレバレッジで表現しない。 確信が強いなら、原資産の比率を上げるほうがはるかに正直な方法です。
核心はシンプルです。良い企業を見つけることと、その企業にどの道具で接近するかは、まったく別の問題です。優れた判断でも、誤った道具と出会えば破壊的な結果になります。
価格と価値の違いを扱った価格と価値、規律ある投資とバリュー投資の基本哲学も併せてお読みいただくと、このテーマがより鮮明になるはずです。
FAQ
Q: 3倍レバレッジETFを1年保有すれば、原資産の収益率の3倍が得られますか。 A: いいえ。商品は一日の収益率だけを3倍で複製し、毎日リセットされます。期間が長くなるほど実際の収益率は3倍から大きく乖離し、変動の大きい局面では原資産が上昇していても損失が出ることがあります。
Q: ボラティリティ・ディケイは下落相場でだけ起きますか。 A: いいえ。方向とは無関係に「上下に揺れる程度」から生じます。原資産が横ばいでも値動きが激しければ、レバレッジ商品の残高は減り続けます。
Q: 原資産が30%下がれば3倍商品は90%下がりますか。 A: 正確にはそうではありませんが、実際にはそれより悪くなることがよくあります。韓国では原資産が30%程度下落した局面で、連動商品が約80%の損失を出した事例が報告されています。単純な3倍計算にディケイ効果が上乗せされるためです。
Q: では、どんなときに使うのが合理的ですか。 A: 数日以内の短いヘッジや短期トレード目的であれば、道具として成立します。長期の資産形成手段としては、設計そのものが適合していません。
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