ペイパル(PYPL)— 高値から85%下落、売上は30%成長。チャンスか?
ペイパル(PYPL)— 高値から85%下落、売上は30%成長。チャンスか?
TL;DR ペイパル株価44ドル、2021年高値310ドルから85%下落。同期間の売上は250億ドルから330億ドルへ30%増加。FCFと純利益いずれも8倍のマルチプル。3年複合売上成長率6.5%、5年9%、10年13%。Stripeの買収観測とCEO交代(Enrique Lores)も重なる。DCF分析ベースの適正価格帯は60〜160ドル、中間値85〜111ドル。
310ドルから44ドルへ。
2021年7月、ペイパルは時価総額ベースで米国フィンテックの王者だった。それから5年、同じ会社の株価が85%下がっている。
しかし一つ奇妙な点がある。2021年の売上は250億ドル。昨年の売上は330億ドルだ。売上が30%多い企業の株価が85%安い。これだけで買いの根拠にはならないが、バリュー投資家ならここで立ち止まるべきシグナルだ。
なぜ85%下落したのか
パンデミック時代のデジタル決済の爆発的成長が、持続不可能な期待を生んだ。
全員がオンラインで買い物をしていた。現金は誰も使わなかった。ペイパルの株価は、この成長が永遠に続くという前提で極端なバリュエーションまで上昇した。
永遠ではなかった。
成長率が正常な水準に戻り、株価は暴落した。しかし「成長が止まった」と「成長がパンデミック水準から正常に戻った」はまったく違う話だ。市場はこの二つを区別できなかった。
主要財務指標
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 時価総額 | 420億ドル |
| 現在株価 | 44ドル |
| 年間フリーキャッシュフロー | 55億ドル(1年)/ 53億ドル(5年平均) |
| FCF倍率 | 8倍 |
| PER | 8倍 |
| 配当利回り | 0.3%(1.3億ドル) |
| 粗利益率 | 46% |
FCFが純利益を上回っている点が注目に値する。会計上の利益ではなく、実際のキャッシュをより多く生み出しているということだ。
8倍のマルチプルは、売上が毎年減少している企業に付く価格だ。
成長は続いている
| 期間 | 年間複合売上成長率 |
|---|---|
| 3年 | 6.5% |
| 5年 | 9% |
| 10年 | 13% |
5年間の買収に費やした金額はわずか23億ドル。この成長の大部分はオーガニックだ。
収益性も堅調。5年純利益率13.7%、直近1年15.8%、10年14.2%。売上が1ドル増えるごとに46セントが粗利益として残る。
買収観測とCEO交代
Stripeが関心を示しているとの報道があった。買収関心が成立を意味するわけではないが、業界プレイヤーがこの価格に大きな価値を見出しているシグナルだ。
CEOも交代した。ヒューレット・パッカードを率いたEnrique Loresが新CEOに就任。不振だった事業に新しい視点のリーダーシップ — 注視する価値がある。
コアビジネスは堅固だ。ユーザーベースは巨大で、ブランドはグローバルに信頼されている。特に海外オンラインショッピングでペイパルを選ぶ理由は明確だ — 金融情報をすべてのサイトに渡す必要がない。Venmoは40歳以下のアメリカ人の大半が日常的に使用している。
DCFバリュエーション分析
10年分析の前提条件:
売上成長率:2% / 4% / 6%。過去実績に対して保守的。フィンテック競争の激化を反映。
FCFマージン:16% / 19% / 22%。現在のFCFマージンは下落傾向だが、事業再投資過程と判断。
10年後PER:13x / 15x / 17x。競争環境を考慮して保守的に設定。資本収益率は改善中で小幅な成長はあるが大きくはない。
要求リターン:9%
| シナリオ | 適正株価 |
|---|---|
| 保守的 | 60〜75ドル |
| 中間 | 85〜111ドル |
| 楽観的 | 120〜160ドル |
現在株価44ドル。保守的仮定でも36〜70%の上昇余地、中間仮定では約2倍の可能性がある。
リスクと反論
フィンテック競争は実質的な脅威だ。Apple Pay、Google Pay、そして無数のスタートアップが決済市場を侵食している。
規制リスクも存在する。各国の規制環境が強化される可能性がある。
成長率が一桁台中盤に留まるなら、8倍のマルチプルは「割安」ではなく「適正」かもしれない。しかしこのレベルのリスクを考慮しても、同様のリスク・リワードプロファイルを持つ30〜40銘柄でポートフォリオを構築すれば、10年後にかなり良い成果を上げる確率は高い。個別銘柄で当てようとしているのではない。ポートフォリオ全体で勝とうとしているのだ。
同じカテゴリーの記事
4月テック株ショッピングリスト — Microsoft、Cloudflare、ServiceNowが半額の理由
4月テック株ショッピングリスト — Microsoft、Cloudflare、ServiceNowが半額の理由
ServiceNowがP/S 6.9倍で5年平均(15倍)比56%割引、Microsoftは31%割引でOpenAI持分(1,300億ドル)を保有、Cloudflareは世界のインターネット20%にエッジコンピューティング優位を持つ。売上成長率調整バリュエーション基準で13テック株中最上位の取引だ。
AIはサイバーセキュリティを代替できるか — ZscalerとRubrikが示す歴史的割引
AIはサイバーセキュリティを代替できるか — ZscalerとRubrikが示す歴史的割引
ZscalerがP/S 6.6倍で5年平均(17.2倍)比61%割引、Rubrikは55%下落で53%割引で取引中。AIのハルシネーションリスクとイラン関連サイバー攻撃の急増により、サイバーセキュリティは代替不可能な必須支出であることが再確認されている。
デルタ航空 & コムキャスト — 「割安」と「負債」が出会うとき
デルタ航空 & コムキャスト — 「割安」と「負債」が出会うとき
デルタ航空PER 8.3倍、プレミアム旅行転換で利益率改善中だが景気循環リスクと負債が課題。コムキャストFCF 5.5倍(時価総額)だが企業価値ベース14倍、純負債1,700億ドル。金利上昇時のリファイナンスリスクが最大論点。時価総額ベースの倍率だけでは判断を誤る。
次の記事
デルタ航空 & コムキャスト — 「割安」と「負債」が出会うとき
デルタ航空 & コムキャスト — 「割安」と「負債」が出会うとき
デルタ航空PER 8.3倍、プレミアム旅行転換で利益率改善中だが景気循環リスクと負債が課題。コムキャストFCF 5.5倍(時価総額)だが企業価値ベース14倍、純負債1,700億ドル。金利上昇時のリファイナンスリスクが最大論点。時価総額ベースの倍率だけでは判断を誤る。
S&P 500利益成長18%とイラン戦争 — ゴムバンドのように跳ね返る準備をする市場
S&P 500利益成長18%とイラン戦争 — ゴムバンドのように跳ね返る準備をする市場
S&P 500企業の利益成長率が18%に加速中で、イラン紛争は5週目に入り2週間以内の終結可能性が浮上した。利益加速環境での株価下落は地政学的割引であり、ニュース一つで急反発しうるゴムバンド構造だ。
AIはサイバーセキュリティを代替できるか — ZscalerとRubrikが示す歴史的割引
AIはサイバーセキュリティを代替できるか — ZscalerとRubrikが示す歴史的割引
ZscalerがP/S 6.6倍で5年平均(17.2倍)比61%割引、Rubrikは55%下落で53%割引で取引中。AIのハルシネーションリスクとイラン関連サイバー攻撃の急増により、サイバーセキュリティは代替不可能な必須支出であることが再確認されている。
以前の記事
バフェット vs アックマン — 今の市場は割安か、そうでないか
バフェット vs アックマン — 今の市場は割安か、そうでないか
バフェットは「市場は割安ではない」と3,700億ドルの現金を保有し待機。アックマンは「歴史上最高の買い場」と積極買い推奨。同じ週に正反対の見解 — どちらも部分的に正しい。市場全体は割安ではないが、個別の高品質銘柄にはミスプライシングが存在する。
20代から引退まで — 年齢別資産配分の完全ガイド
20代から引退まで — 年齢別資産配分の完全ガイド
20代は100%株式、引退後は50%株式+3年分の生活費を現金確保が原則。401kマッチング→Roth IRA→課税証券口座の順で税金効率を最適化する。
ETFだけで資産を築く方法 — 成長 vs バリュー、3ファンド戦略
ETFだけで資産を築く方法 — 成長 vs バリュー、3ファンド戦略
個別株比率が高いほどストレスとアンダーパフォームの確率が上がる。ポートフォリオの80〜90%をETFで構成し、コア(VOO)+バリュー(SCHD)+成長(QQQM)の3ファンド戦略が最も検証されたアプローチだ。