トレッドミルテスト:売上20%成長が実は危険信号であるとき
トレッドミルテスト:売上20%成長が実は危険信号であるとき
成長の「値札」を見なければ騙される
結論から言えば、売上成長率そのものにはほとんど意味がありません。重要なのは、その成長を買うために会社がいくら燃やしたか、です。
平均的な個人投資家は「あるテック企業、売上20%成長」という見出しを見ます。そしてすぐに買いボタンを押す。私はこの反射的な買いこそ、個人投資家を最も多く殺す習慣のひとつだと考えています。
私のシステムは見出しを信じません。代わりに、その会社がその成長を買うために正確に何を支払ったかを見ます。私はこれをトレッドミルテストと呼んでいます。
トレッドミルテストが捕まえるもの
例を挙げましょう。ある会社が売上を20%伸ばしました。良さそうです。しかし、その20%を生むためにR&D支出を40%増やさなければならなかったとしたら?
それは革新ではありません。その会社は企業版のランニングマシンの上にいるのです。莫大な現金を燃やしながら、ただ同じ場所に立ち続けるために全力疾走している状態。表面上は成長に見えても、実際には成長を借りているだけです。
本当に優れた会社は、より少なく投じてより多く成長します。投入に対する産出、その比率こそがトレッドミルテストの核心です。
テスト不合格は「売り」ではない
ここを誤解してはいけません。トレッドミルテストに通らなかったからといって、その銘柄が完全に死んだという意味ではありません。
ただし、その銘柄の背中から要塞のラベルを即座に剥がします。 もう安心して長期保有できる銘柄ではない、ということです。
もし強気のシナリオがまだ生きているなら、その銘柄は「高度に制限された短期の戦術取引」へ格下げされます。持ち続ける銘柄から、短く取って抜ける銘柄へと身分が変わるのです。同じ会社でも、財務の体力次第でポートフォリオ内の役割は変わります。
私が実際に回す30種類のテストのひとつにすぎない
YouTubeで人々が見るのは、よく磨かれた結果です。彼らが見ないのは、その結果を生むために背景で絶えず回り続ける機械です。
数千ページに及ぶ退屈なSEC開示を一つ一つ読み込む時間、負債構造を分析し制約のない現金を追跡する作業 — トレッドミルテストは、私が会社に回す30を超える数学的・フォレンジックなストレステストのうち、たったひとつにすぎません。
核心はこうです。投資は推測のゲームではなく、データのゲームです。次に「売上X%成長」という見出しを見たら、必ずもう一度問いかけてください。その成長を買うために、会社はいくら燃やしたのか?
同じカテゴリーの記事
売上は爆発、株価は停滞:エヌビディアの強気論と弱気論を完全整理
売上は爆発、株価は停滞:エヌビディアの強気論と弱気論を完全整理
エヌビディアの売上は2021年の160億ドルから5年足らずで2,530億ドルへ爆発したのに、株価はAMDやマイクロンに後れを取りました。ジェンスン・フアンの「放物線的な需要」発言と、強気論3つ・弱気論3つを私の視点で整理します。
エヌビディアのバリュエーション:今の適正株価はいくらか
エヌビディアのバリュエーション:今の適正株価はいくらか
時価総額5兆ドル、株価売上高倍率(PSR)19.6倍、直近1年の純利益率63%。保守的な前提(売上成長10〜25%、利益率35〜55%)で10年DCFを回すと、要求利回り9%基準の適正中央値は250ドル、私個人の15%基準では154ドルになりました。
エヌビディアで「家賃」を受け取る:カバードコール戦略の理解
エヌビディアで「家賃」を受け取る:カバードコール戦略の理解
エヌビディアを売るか持つか迷うなら、カバードコールが答えになり得ます。9月18日満期の250ドルコールを売れば1株約3.37ドル(年約8.8%)、220ドルコールなら10.39ドル(約27%)を受け取れます。仕組みと落とし穴を私の視点で整理します。
次の記事
メインストリート・キャピタル、52週安値の8.7%配当マシン — 一度も減配していない理由
メインストリート・キャピタル、52週安値の8.7%配当マシン — 一度も減配していない理由
株価$49.63に対し52週安値は$48.95。2007年のIPO以来、月次配当を一度も減らしたことのないBDCが金利低下懸念で底値圏にあります。8.7%の利回りと18年連続増配の意味を分析します。
住宅市場が止まったとき:ホーム・デポ、ロウズ、シャーウィン・ウィリアムズが揃って52週安値にある理由
住宅市場が止まったとき:ホーム・デポ、ロウズ、シャーウィン・ウィリアムズが揃って52週安値にある理由
金融危機以来最悪と評される住宅市場の中で、ホーム・デポ、ロウズ、シャーウィン・ウィリアムズが揃って52週安値にあります。三つの配当名門の業績・配当・自社株戦略を比較し、誰がインカムで誰がトータルリターンかを見極めます。
中国ゲーム株が配当リストに?52週安値のネットイースが示すもの
中国ゲーム株が配当リストに?52週安値のネットイースが示すもの
ネットイース(NTES)は株価$116.55、52週安値$116で、高値から27%下落しています。243億ドルの純現金と四半期ごとの変動配当政策を持つキャッシュリッチなゲーム会社が、なぜ「配当株」リストに入るのか、そして30年試算の落とし穴まで整理します。
以前の記事
なぜバンク・オブ・アメリカの「弱気相場シグナル」10個のうち7個が赤信号なのか
なぜバンク・オブ・アメリカの「弱気相場シグナル」10個のうち7個が赤信号なのか
BofAの弱気相場シグナル10個のうち7個が点灯し、市場は20の指標のうち17で割高、8つでは2000年のドットコムバブルよりも高い水準です。ただ、私が最も注目した赤信号は別にあります。
景気後退の確率40%、あるエコノミストが挙げた3つの理由
景気後退の確率40%、あるエコノミストが挙げた3つの理由
ムーディーズのマーク・ザンディは今後1年の景気後退確率を40%と見ています(平年平均は15%)。実質所得の停滞、ホルムズ海峡発の原油ショック、そして身動きが取れないFRB — どれもあなたの財布で感じられる信号です。
バフェット指標が50年ぶりの高水準、それでもバフェット本人は買っている
バフェット指標が50年ぶりの高水準、それでもバフェット本人は買っている
バフェットが『単一で最良のバリュエーション測定ツール』と呼んだ指標が1970年以降の最高値(GDPの2倍超)に達しました。それでもバークシャーはアルファベットに100億ドルを投じました。その矛盾を解く鍵が、原則に基づく投資です。