メタの適正価格はいくらか — 時価総額1.6兆ドルを10年モデルに入れてみた
メタの適正価格はいくらか — 時価総額1.6兆ドルを10年モデルに入れてみた
TL;DR 私の前提で計算したメタの中間適正価格は1株850〜870ドルです。下限は540〜560ドル、上限は約1,400ドル。現在株価を基準に中間シナリオが実現すれば、配当込みで年約12.9%のリターンになります。ただしこれは私の前提であり、正解ではありません。
メタはいま割安か、割高か
予想PER約21倍、PEGは1未満。世界で最も賢いと言われる投資家の何人かが、この株を割安だと言っています。それでも市場は1年で株価を11%引き下げました。どちらかが間違っています。
私がやろうとしているのは、どちらが正しいかを当てることではありません。数字を自分で計算し、いまの価格が正当化されるにはどんな未来が実現しなければならないかを逆算することです。
始める前に一つ明確にしておきます。この記事は銘柄推奨ではありません。私はプロセスを示したいのであって、皆さんはそのプロセスをご自身がよく知る銘柄に適用してください。目的は夜ぐっすり眠り、より良い判断を下すことです。
ステップ1 — 価格と企業価値を確認する
メタの時価総額は1.6兆ドルです。発行済株式数に株価を掛けた、実際に支払う価格です。
次に見るのが企業価値(EV)で、1兆6,800億ドル。差額の約800億ドルが本質的に純有利子負債です。
昨年のフリーキャッシュフローは約500億ドルでした。設備投資の引き上げでこの数字は確実に減ります。ただ現在の水準を維持するだけでも、2年足らずで純有利子負債を全額返済できます。財務構造そのものを心配する状態ではありません。
ここで強調しておきたい点があります。設備投資は完全に会社の判断事項です。明日止めると決めればフリーキャッシュフローは急増します。なぜわかるかというと、純利益がはるかに高いからです。昨年の純利益は710億ドルでした。この710億ドルと500億ドルの差こそ、いま会社が未来へ押し込んでいる金額です。
ステップ2 — 事業の質を確認する
バリュエーションの前に、この会社がプレミアムを受ける資格があるかを見ます。
| 指標 | 数値 | 読み方 |
|---|---|---|
| ROIC 5年平均 | 18.6% | 資本を上手く回している |
| ROIC 昨年 | 16.3% | 設備投資拡大で小幅低下 |
| 純利益率 | 約32% | きわめて安定 |
| 売上総利益率 | 82% | 最上位水準 |
| 営業利益率 | 40%超 | この規模では最上位 |
売上総利益率82%が実務的に意味するのはこうです。広告売上1ドルが入るとき、82セントが間接費と税金を引く前の利益として残ります。この構造の企業は、売上が伸びるとき利益をはるかに速く引き上げられます。
現在の取引倍率はフリーキャッシュフロー33倍、PER23倍。PER23倍は高いのか。市場の歴史的平均である15〜16倍より高いのは事実です。しかし成長性が高く、売上総利益率が高く、市場支配力を持つ最高品質の企業であれば、23倍はそれほど高くないかもしれません。結局は将来の成長次第です。
私が使う8項目のチェックでは、2か所にXが付きました。5年PERと5年の株価対フリーキャッシュフロー、どちらもバリュエーション指標です。残りはすべてチェック。高い資本収益率、割安に見えた局面での自社株買いの実績、5年間増加したキャッシュフロー・純利益・売上、そして低い負債。事業は全部通過し、価格だけが引っかかっているという意味です。
ならば残る選択肢は三つだけです。ファンダメンタルズの改善を待つか、株価が下がるのを待つか、その両方を待つか。
ステップ3 — アナリスト予想を参照値に置く
アナリストは、今年1株33ドルの利益が今後5年で58ドルまで成長すると見ています。5年間二桁成長が続くという意味です。
売上はさらに印象的です。今後7年で2,580億ドルから5,830億ドルへ倍以上に増えると見られています。年率10%超の成長です。これだけ巨大な企業が、広告と売上のための資源をまだ使い切っていないというのが私の判断です。
ただしアナリスト予想は出発点であって結論ではありません。私のモデルはこれより保守的に置いています。
ステップ4 — 10年の前提を自分で入れる
私が入れた前提は次の通りです。それぞれ下限・中間・上限のシナリオです。
- 売上成長率: 7% / 10% / 14%
- 営業利益率: 29% / 31% / 33%
- フリーキャッシュフロー・マージン: 28% / 30% / 32%
- 10年後の出口倍率(PER・株価/FCF): 18倍 / 22倍 / 26倍
- 要求リターン: 9〜10%
最も議論を呼ぶのが出口倍率です。私が勧めるのは、現在株価にも過去5年の数値にもとらわれず、市場の長期平均である15〜16倍から出発することです。良い企業なら上へ、悪い企業なら下へ調整すればよい。
メタは確実に良い企業です。高い資本収益率、82%の売上総利益率、35億人の日次ユーザー。人々が製品を実際に愛用しています。そこで18/22/26と、かなり高いプレミアムを付けました。
要求リターンを9〜10%に置いた理由も述べておきます。私は「自分が買いたい価格」ではなく「本源的価値」を知ろうとしているからです。要求リターンは人によって違います。皆さんはご自身に合う数字を入れてください。価格とリターンの関係そのものは価格がリターンを決めるで詳しく扱いました。
ステップ5 — 結果
| シナリオ | 適正価格 |
|---|---|
| 下限 | 540〜560ドル |
| 中間 | 850〜870ドル |
| 上限 | 約1,400ドル |
今日の株価を基準に、私の中間前提がすべて実現すれば、配当を含めて年約12.9%のリターンになります。
この数字をどう読むかというと、下限シナリオが現在株価の近くにあるという点が核心です。つまりいまの価格は「保守的な前提でも大きくは損をしない」帯に掛かっており、中間前提が当たれば二桁リターンが出ます。ただし安全域が非常に厚いとは言えません。
賢い資金はどちら側に立っているか
数字だけがすべてではないので、ポジションも見ます。
ビル・アックマンはメタをポートフォリオ全体の約11%まで引き上げました。彼のパーシング・スクエアは平均取得単価572ドルで260万株以上を保有しています。アックマンはメタが途方もなく割安であり、長期的に成長する企業だと公に述べてきました。AIインフラへの大規模投資が中核プラットフォームをより効率的で収益性の高いものにし、最終的に成果を出すというのが彼の論理です。アックマンの市場観はバフェット vs アックマン — いま市場は割安かで整理しています。
もう一つ、この会社は創業者が率いる企業です。マーク・ザッカーバーグは依然として全株式の13.5%を保有しており、その価値は2,000億ドルを超えます。さらに重要なのは、種類株構造により議決権全体の約61%を支配している点です。短期のアクティビストや取締役会の政治に振り回されず、長期投資に踏み切れるという意味です。
これは両刃の剣です。方向が正しければ絶大な強みですが、株価が88ドルだった頃に人々が彼の辞任を求めていた時期を思い出すなら、逆方向のリスクも併せて見るべきです。
88ドルで学んだこと
個人的な話を一つ添えます。私はメタを1株88ドル近辺で買いました。運良く、ほぼ最安値でした。
テレビで誰かが買えと言ったから買ったのではありません。この記事でやったのとまったく同じように座って計算し、そして買いました。当時、人々はザッカーバーグは解任されるべきだと言い、恐怖の対象はメタバースでした。私はその時も、事業が依然として成長している点を見ていました。結果としてメタバースは失敗し、事業はむしろ良くなりました。
私がやったのは、会社が稼ぐ利益を見て、支払う価格を見て、計算して、市場が間違っていると判断しただけです。感情を排して数字に語らせる。このプロセスがやることはそれで全部です。
同じ手法で直近の反発後の参入余地を点検した記事はメタ株価、反発後も入る余地は残っているかにあります。
FAQ
Q: PER23倍は市場平均より高いのに、なぜプレミアムを認めるのですか。 A: 歴史的平均15〜16倍は平均的な企業に対する値です。メタは売上総利益率82%、ROIC5年平均18.6%、売上30%台の成長を同時に示す企業です。同じ倍率を当てはめること自体がむしろ不正確です。ただしどれだけプレミアムを与えるかは各自の判断で、私の18/22/26も正解ではありません。
Q: 設備投資が増えるとフリーキャッシュフローが減りますが、モデルは反映していますか。 A: フリーキャッシュフロー・マージンを28〜32%に置いたのがその反映です。昨年の500億ドルは売上比でずっと高い水準でしたが、設備投資拡大を踏まえて意図的に下げました。設備投資は会社が調整できる項目だという点も併せて覚えておく必要があります。
Q: PEGが1未満なら無条件に割安ではないですか。 A: PEGは成長に対する価格を見る便利な指標ですが、単独で使うのは危険です。分母の成長率予想が外れれば全体が外れます。私はPEGを調べ始める合図としてのみ使い、実際の判断は10年のキャッシュフロー前提で下します。
Q: 中間シナリオ12.9%なら、いま買うべきですか。 A: それはご自身の要求リターン次第です。年9%で十分という方には余裕のある数字であり、15%を求める方には足りない数字です。同じ計算から人によって異なる結論が出るのは、矛盾ではなく正常なことです。
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