マイクロソフトは本当に「衰退企業」なのか?今年20%下落の本当の理由
マイクロソフトは本当に「衰退企業」なのか?今年20%下落の本当の理由
まず、市場がマイクロソフトに投げた問いに答えます
私はマイクロソフトを衰退企業だとは見ていません。株価は今年20%以上下げましたが、クラウド売上は依然30%成長し、過去10年で営業利益率はむしろ上がっています。問題は会社ではなく、この転換期をどう値付けすべきか市場がまだ分かっていないことです。
今年のマイクロソフト株は市場を大きく下回りました。年初来で20%以上下落する一方、市場全体は10〜13%上昇。30ポイントを超える乖離です。大型優良株でこれだけの開きが出ると、私は反射的に二つを問います。この恐怖は正当なのか、それとも市場が先走っているのか。
市場が恐れている二つのこと
株価を押し下げる恐怖は大きく二つです。
一つ目はお金。マイクロソフトはAIインフラに実に1,900億ドルを投じています。数字が圧倒的なだけに、投資家は「では、これはいつ回収されるのか」と問わざるを得ません。今の株価には、その回収の絵が全く織り込まれていないのです。
二つ目、そしてこちらがより大きい恐怖ですが、AIエージェントが伝統的なソフトウェア事業を侵食するという懸念です。マイクロソフトはMicrosoft 365やTeamsのようなサブスク型ソフトで巨額を稼ぎます。企業は席(シート)一つ、ライセンス一つごとに支払う。ところがAIがその業務を自動で、より安く片付けてしまえば、企業がその多くの席を買い続ける理由はあるのか、というわけです。この恐怖は今、マイクロソフトを含むソフトウェア業界全体を叩いています。
数字は別の物語を語る
ところが実績を開くと、衰退企業の姿ではありません。
2026会計年度第3四半期(3月終了)のマイクロソフト・クラウド総売上は545億ドルで、前年比30%増。加えてAI専業事業は年換算売上370億ドルを突破しました。消費者向けOffice 365は前年比7%成長、法人向けは4億5,000万人超のユーザーで17%成長です。
利益の質はさらに際立ちます。10年平均営業利益率33.9%、5年平均36.7%、直近1年は39.34%。10年で利益率が33%台から39%台へ上がったのです。資本利益率(ROC)も直近5年で21%前後を維持。この表を見ながら、私は「これが斜陽事業の数字か」と何度も自問しました。未来は誰にも分かりませんが、少なくともこの数字は衰退企業のものではありません。
では、いくらなら買えるか
まずマイクロソフトの「価格」から。時価総額2兆8,000億ドル、企業価値(EV)3兆200億ドル。その2,000億ドルの差が純有利子負債で、昨年のフリーキャッシュフローは730億ドル。大規模な設備投資をしてもこの水準なので、2,000億ドルの負債は難なく賄えます。
バリュエーションはフリーキャッシュフローの38倍、利益の22倍。私が使う8つの指標(8 pillars)で引っかかるのは二つだけ、どちらもバリュエーション関連です。つまり「割高」のサイン。ただしここで必ず覚えておくべきことがあります。同じPER22倍、キャッシュフロー38倍でも、毎年100%成長するならとてつもなく割安、毎年3%縮むならとてつもなく割高です。倍率は成長率とセットで初めて意味を持ちます。
アナリスト予想では一株利益が17ドルから7年後に40ドルへ、約2.5倍。売上も3,360億ドルから7,600億ドルへ倍増します。年10%超の成長です。
私はここに自分の仮定を入れ、10年ベースで計算しました。売上成長率7・10・13%、営業利益率34・37・40%、10年後に付与するPERは20・23・26倍。高品質で広い堀を持つ会社なのでプレミアムを乗せています。安全域なしで9%リターンだけ求めると、内在価値は低く360ドル、高く820ドル、中央値545ドル。今の価格で約14%の期待リターンです。ここに私の要求利回り15%を入れると、買値は低く234ドル、中央値347ドル、高く514ドルになります。
そこで私はウォッチリストのアラート価格を330ドルから350ドルへ引き上げました。計算が良くなったからです。350ドル以下に来れば通知を受け、もう一度数字を回した上で、株を直接買うか、キャッシュ・セキュアード・プットを売るつもりです。
上がろうが下がろうが、株価そのものは情報ではない
最後に、投資で私が最も大きく学んだ教訓を一つ。株価が上がったという事実、下がったという事実、それ自体は何も語りません。大事なのは、その価格があなたに何を買ってくれるかです。
私はインテルを17ドルまで下がる間、持ち続けました。今は130ドル。ですが私はインテルに130ドルの価値があるとは思いません。もし常に「自分の株は割安だ」としか考えないなら、その株が5倍、10倍になっても同じく割安だと言い張ることになります。過程のない結論は、いずれ信頼を失わせます。
だから私はいつも同じことを言います。私の、あるいはネット上の誰の「買い」も、そのまま真似しないでください。ウォーレン・バフェットでも。代わりに、価格と価値を見極める「過程」を真似してください。株を買うとは事業の一片を買うことであり、明日ではなく数年先を見て買うことです。
FAQ
Q: マイクロソフトが今年20%下げたのは業績が悪いからですか? A: いいえ。クラウド売上は30%成長し、利益率も過去最高水準です。下落の核心は、1,900億ドルに上るAI投資の回収時期への不安と、AIエージェントがソフトウェアのサブスクを侵食するという恐怖です。
Q: PER22倍、キャッシュフロー38倍なら割高では? A: 倍率だけでは判断できません。同じ倍率でも二桁成長なら割安、逆成長なら割高です。マイクロソフトはアナリスト予想で7年間に売上・利益が2倍超に伸びる見込みです。
Q: 今買ってもいいですか? A: それは各自の要求利回り次第です。私の9%基準の内在価値中央値は545ドルですが、私の要求利回り15%を入れると買値は347ドル付近です。私は350ドルをアラートに設定して待ちます。
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