S&P 500の上位10銘柄が指数の40%を占める時代 — パッシブ投資の構造を疑う
S&P 500の上位10銘柄が指数の40%を占める時代 — パッシブ投資の構造を疑う
1972年以来の集中度
私が米国株を見るたびに頭から離れない数字が一つある。40%。S&P 500のうち、上位10社が指数全体に占める比重だ。残りの490銘柄が60%を分け合っている。
数字そのものよりも、1972年以来この水準を見ていないという歴史的事実の方が重い。1973年は第一次オイルショック直前、ニフティ・フィフティ相場の終盤だった。今の構図がその時期と似ているのは、偶然と片付けるには気になる。
時価総額加重 = メガキャップに自動で流れる仕組み
仕組みはシンプルだ。S&P 500は時価総額加重で構成される。マイクロソフトの時価総額が小さな企業の10倍であれば、インデックスファンドに入る1ドルのうち10倍多くがマイクロソフトに流れる。
文字にすると当たり前に見える。だが実際の資金量と組み合わせると、結果は非対称になる。401(k)への毎月の積立も、IRAの追加投資も、パッシブETFの購入も、まず同じ銘柄に当たる。割安かどうかは関係ない。時価総額が大きければそれだけ多く受け取る。
13兆ドルの自動買い注文
米国ETFの運用資産はおよそ13兆ドル。年内に15兆ドルを超えるとの予測もある。401(k)や年金資金を加えれば、毎営業日、巨大企業に向けた自動的な買い注文が積み上がっていく。
この資金はアップルの妥当価値を考えない。エヌビディアのDCFも回さない。時価総額の比率に従って機械的に分配されるだけだ。大企業はさらに大きくなり、指数内のウェイトが増え、次に入ってくる資金はさらにメガキャップに偏って配分される。
これがフライホイールだ。そして、フライホイールは逆方向にも回る。
メガキャップが冷えたら何が起きるか
今年のエヌビディアのチャートを思い出してほしい。半年近く動かなかった時期がある。メガキャップが同時に冷えれば、指数も一緒に冷える。パッシブ需要は下落を一時的に支えるが、流れが純流出に転じれば、同じメカニズムは反対方向で機能する。最も大きい銘柄が最も大きな強制売却を受ける。
これを書くのは、多くの個人投資家が「インデックスを買う=分散投資」と思っているからだ。名目では500銘柄を持っている。しかしドルベースで見れば、その半分は10銘柄への賭けだ。
三つの選択肢
私が自分の配分を考える時に通る三つのレーンがある。
1. メガキャップにさらに寄せる。 OEFというETFはS&P 100を追従する。同じパッシブの追い風を、より集中した形で受ける。構造的な追い風を受け入れるなら、最もクリーンな乗り方だ。私の資産の一部はこれで運用している。万人向けではない。
2. 等加重で集中度を薄める。 RSPはS&P 500の500銘柄をほぼ均等に保有する。メガキャップの追い風を諦める代わりに、本当の意味での分散を得る。リーダーシップが変わる相場では、これが静かにアウトパフォームすることが多い。
3. セクターローテーションで超過収益を取りにいく。 ここが私の研究時間の大半を占める領域だ。メガキャップが冷える時、資金は消えるのではなく回転する。その流れを追跡し、勝つセクターの中のリーダーを探す。
「インデックス=安全」の方程式に入った亀裂
インデックスファンドが壊れていると言いたいわけではない。低コストで、税効率が良く、長期保有に耐える。ただ、インデックスを買うことが米国経済への中立的な賭けではなくなっているということだ。それは、ひと握りのメガキャップへのレバレッジ的な賭けに近づいている。
その露出を許容できるならそれで良い。許容できないなら、代替手段はあるし、コストもほぼ同じだ。最悪なのは、自分が何を持っているか分からないままインデックスに座っていることだ。
FAQ
Q: インデックスファンドを売却すべきですか? A: そうは言っていない。インデックスファンドは依然として長期投資の有効な手段だ。重要なのは「自分が何を持っているか」を知ることだ。等加重ETFやセクターETFを一部混ぜるのが現実的な対処法になる。
Q: 上位10銘柄が40%という集中度は、どれほど危険なシグナルですか? A: 1972年以来の水準だ。1973年以降に大きな調整があったことは事実だが、当時のトリガーはオイルショックそのものだった。集中度自体が暴落を引き起こすわけではないが、ショックが来た時の下落幅を増幅する構造になっているのは間違いない。
Q: OEFのようにメガキャップに寄せるのは正解ですか? A: パッシブ資金の流れがメガキャップに有利な間は、短期的にはOEFがS&P 500よりも好調になる可能性がある。ただし、流れが反転すれば下落幅も大きくなる。リスク許容度と投資期間によって決める話で、絶対的な正解はない。
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