指数は二桁上昇、それでも3分の1はマイナス — S&P500に隠れた下落相場
指数は二桁上昇、それでも3分の1はマイナス — S&P500に隠れた下落相場
指数は二桁上昇なのに、なぜ自分の口座はマイナスなのか
指数が上がったのではなく、指数の一部だけが上がったからです。2026年上半期時点で、S&P500の構成銘柄のうち約177銘柄が年初来マイナスです。3銘柄に1銘柄以上が下落しているのに、上位のごく一部の急騰が指数全体を押し上げているため、その事実が見出しに出てこないだけです。
今週、私が画面に一番長く映していたのは個別銘柄のチャートではなく、S&P500全銘柄の年初来リターン一覧でした。上から眺めれば「相場は絶好調」というニュースの理由がすぐ分かります。ところが一番下までスクロールすると、まったく別の市場が現れます。
同じ指数の中に、強気相場と弱気相場が同時に存在しています。
数字で見る2026年上半期
上位17銘柄は年初来100%以上の上昇です。デル、マイクロン、インテル、マーベル、HPEといった名前が並び、傾向はかなりはっきりしています。資金は半導体とハードウェア、つまりAI投資の物理的な層に集中しました。
50%以上上昇した銘柄は46社。プラス圏にいるのは上位323社までです。500社中323社ですから、「相場が good」という表現自体は間違っていません。
問題は残る177社です。全体の約35%、つまり3銘柄に1銘柄以上が半年で株主に損失をもたらしました。その中には30%以上下落した集団が別途できているほどです。
下落リストに並ぶ名前のほうが驚きです
このリストの特異な点は、無名の小型株ではなく、みなさんが毎日使っている製品を作る企業がずらりと入っていることです。
- インテュイット(TurboTax・QuickBooks) -58%
- ルルレモン -42%
- アドビ -34%
- オラクル -32%
- ナイキ -31%
- サービスナウ -27%
- パランティア -26%
- ネットフリックス -21%
- マイクロソフト -19%
- ペイパル -18%
- ディズニー -15%
- ロウズ -13%
- テスラ -12%
私はQuickBooksをほぼ毎営業日使っています。その会社の株が半年で半値以下になりました。ナイキに至っては、この記事を読んでいるほぼ全員が何かしら買ったことのある会社ですが、今年だけで30%以上下げています。
ここで多くの人がやる二つの間違い
一つ目は「この領域は丸ごと危ない」と判断して全部避けること。二つ目は逆に「安くなった」という理由だけでリストから適当に買うことです。
私はどちらも間違いだと考えます。前者は市場が周期的に差し出す最も確実な機会区間を自ら消す行為で、後者は下落には正当な下落と不当な下落が混ざっているという事実を無視する行為です。価格が下がったという事実自体は情報ではありません。その価格に何が織り込まれたかが情報です。
私が実際に投げかける三つの質問
下げた銘柄を見るとき、私は順番の決まった三つの質問を使います。前の質問で引っかかれば、後ろは見ません。
第一に、この会社は10年、20年、30年後も存在しているか。 存続を問う質問であって、成長を問う質問ではありません。ここで落ちる会社が想像以上に多い。ビジネスモデルが技術変化の正面に置かれているか、負債構造が次のサイクルに耐えられない会社です。
第二に、そのときの売上と利益は今より大きいか。 存続するだけでは投資になりません。30年後も生きてはいるが売上は今より小さい会社はいくらでもあります。ここに「はい」と答えるには、シェアの推移、価格決定力、顧客当たり売上を実際に確認する必要があります。
第三に、今日のこの価格で買って、自分の資本に十分なリターンが出るか。 三つの中で最も多くのアイデアを落とすのがこれです。優れた会社を見つけるのは難しくありません。優れた会社を納得できる価格で買うのが難しいのです。
最初の二つが「はい」で、価格だけが下がったのなら、それは恐れる対象ではなく投資家への贈り物だと私は思います。
三つ目の質問を数字に変える方法
ここで私が習慣的にやっていることがいくつかあります。
株価ではなく時価総額を見ます。 一株当たりの価格には情報がありません。会社の値段は時価総額です。インテュイットが780億ドル、アドビが890億ドル、ネットフリックスが3,160億ドル、という具合に。
企業価値(EV)と時価総額の差から純有利子負債を読みます。 インテュイットはEVが885億ドルなので差は約100億ドル。大金に見えますが、昨年だけでフリーキャッシュフロー77.6億ドルを生んだ会社です。個人に置き換えれば、あらゆる支出を引いた上で年10万ドル貯金できる人の総負債が15万ドル、という状況です。まったく危険ではありません。逆にディズニーは時価総額1,700億ドルに対しEV2,500億ドル、つまり850億ドルの純有利子負債を抱えています。同じ読み方でまったく違う絵になります。
純利益ではなくフリーキャッシュフロー倍率を見ます。 市場の大半はPERを見ます。しかしソフトウェア企業では、フリーキャッシュフローが会計上の純利益を上回るケースが珍しくありません。インテュイットがPER17倍でありながらフリーキャッシュフロー基準で10倍なのがその例です。この差に、市場がまだ見ていないものが隠れていることがあります。
高い資本収益率を出す優良企業は、通常フリーキャッシュフローの20倍前後で取引されます。今インテュイットは10倍、アドビは8.7倍、ロウズは15倍です。私がこのリストを素通りできなかった理由がここにあります。
正当な下落と不当な下落を分ける線
私の基準は単純です。価格だけ下がって事業指標が保たれていれば機会、事業指標も一緒に折れていれば罠です。
確認すべき事業指標は、売上のトレンド、フリーキャッシュフローのトレンド、投下資本利益率(ROIC)の方向、シェア、そして顧客当たり売上です。たとえば顧客数は減ったが顧客当たり売上が10%上がったのなら、低単価顧客を意図的に整理した選択かもしれません。逆に両方が同時に落ちているなら、弁解の余地はありません。
もう一つ。私は下落リストを見るとき、経営陣がその価格で何をしているかを必ず確認します。株価が下がったときに自社株を積極的に買う会社と、株価が高いときに買って安くなったら止めた会社はまったくの別物です。前者は自社の価値を分かっているという信号で、後者は余剰現金を惰性で使っていたという信号です。
私の結論
今の市場は「全部高い」も「全部安い」も外れる区間です。指数レベルで見ればS&P500は歴史的に負担の重いバリュエーションにあるのは事実です。しかしその指数を500個に分解すると、177個はすでに半年間、自分たちだけの弱気相場を経験しています。
こういう局面で私がやることは一つです。下落リストを銘柄ごとに開いて三つの質問を通るか確認し、通ったものには自分が払う値札を先に貼っておく。それは52週安値近辺で銘柄を探す方法と本質的に同じ作業です。
価格が下がったことと価値が下がったことは、まったく別の事件です。その二つを区別することに費やす時間が、私の経験上、投資で最も割のいい労働です。
FAQ
Q: 指数は上がったのに自分のポートフォリオだけマイナスなのは、銘柄選択のミスでしょうか。 A: 必ずしもそうではありません。2026年上半期時点でS&P500構成銘柄の約35%が年初来マイナスです。無作為に10銘柄選んでも3〜4銘柄がマイナスになるのが統計的に普通の局面です。問題はマイナスであること自体ではなく、その銘柄の売上・キャッシュフロー・資本収益率まで一緒に折れているかどうかです。
Q: 下落率が大きいほど機会も大きいのですか。 A: いいえ。今回のリストで最も下げたインテュイット(-58%)は、顧客離脱、シェア低下、人員17%削減、投資家訴訟が同時進行しています。下落率は機会の大きさではなく、市場がつけた懸念の大きさです。その懸念が妥当かは別途検証が必要です。
Q: フリーキャッシュフロー倍率は何倍から割安ですか。 A: 絶対基準はありませんが、資本収益率の高い優良企業がフリーキャッシュフローの20倍前後で取引されるのを目安にしています。8〜10倍なら、市場がその会社を「衰退する事業」として価格に織り込んでいるということです。その判定が正しいかどうかが投資判断のすべてです。
Q: この三つの質問だけで買い判断をしてよいですか。 A: 私はこれを買い判断ではなく「さらに調べる価値があるか」を分けるフィルターとして使います。三つを通過して初めて、決算資料、競争環境、経営陣の行動を読み込みます。また要求リターンは人によって異なるので、同じ銘柄でも買値が人ごとに違うのが正常です。
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